【株価分析】期待収益率と取得妥当価格の計算方法

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こんにちは、アキヒロです。

株式を取得する際、現在の価格で買えば、どれくらいのリターンが期待できるのか、見込みを立てられていますでしょうか?

「株価分析について考える」という記事で、株価の割高・割安を判断する材料として、次の3つの分析項目を紹介しました。

  • 一株価値の算定
  • BPS及びEPS成長率に基づく期待収益率、及び取得妥当価格の計算
  • PER、PBR、Earning Yieldの分析

今回はその分析項目の2つ目、「BPS及びEPS成長率に基づく期待収益率、及び取得妥当価格の計算」について説明をしていきたいと思います。

まず、BPSとEPSについて確認しておきましょう。

BPS:Book-value Per Share(一株あたり純資産)の略で、純資産を発行済株式数で割ることで計算されます

EPS:Earnings Per Share(一株あたり利益)の略で、当期純利益を発行済株式数で割って算出します

つまり、ここでは、これまでの純資産や純利益の増加傾向(成長率)を基に、将来株価を計算し、その予想株価から

  • 現在の価格で株式を取得した場合の期待収益率はどの程度と見込めるのか
  • また逆に、期待収益率を設定して、その収益率を実現するためには、いくらで株を取得する必要があるのか

を計算してみよう、というものです。

期待収益率の計算方法

まずは1点目、BPS及びEPS成長率による期待収益率の計算です。

これは過去のBPSやEPSの成長率が今後も維持された場合、どの程度の投資リターンが見込まれるのか計算するものです。

計算の結果、仮に期待収益率が1%や2%程度であれば、これは、リスクフリーと言われる米国債より低い利率になりますので、現在の株価は、リスクをとって投資するほど魅力的な価格帯にないということが言えるかと思います。

また、ジェレミー・シーゲルの「株式投資(第四版)」によると米国株式市場の過去(1900-2006)の長期リターンは約6.8%ということですので、期待収益率が8%や10%であれば、現在の株価は比較的安い水準にあり、リスクをとる意味のある有意義な投資と言えるでしょう。

少し数学の授業みたいになりますが、自分が何をしているのか、わかって行うことが大切ですので、順々に説明していきたいと思います。

BPS成長率から期待収益率を求める

まず、BPS成長率(純資産の増加傾向)からn年後のBPSを計算してみましょう。

当期のBPSをBPS0として、来期のBPS1を予想する場合、見込みの成長率をgとすると、

さらに2年後のBPS2は、

となり、つまり、n年後のBPSは、

となります。

BPSの成長率gは、過去5年〜10年程度の平均値など、これまでの実績から設定するのが現実的かと思います。

次にBPSからどうやって株価を計算するか、ですが、ROEとPERを使います。

ROEは、Return on Equityの略で自己資本利益率。当期純利益を自己資本(株主資本)で割ったものです。

また、PERは、Price Earnings Ratioの略で、株価収益率と訳されます。時価総額を当期純利益で割ったものになります。

これだけ見るとピンとこないかもしれませんが、分解してみるとわかりやすいかと思います。

上の数式のとおり、分母と分子を相殺していくと、株価になることがわかりますね。

よって、n年後の予想株価は、

となります。

ROEやPERも、BPS成長率同様、これまでの実績から設定するのが妥当かと思います。

n年後の株価の予想ができましたので、年間の期待収益率を計算していきます。

期待収益率の求め方は以下のとおりです。(文末補足参照)

n年後の予想株価の箇所に先ほど求めた数式を入れると、

となります。

EPSから期待収益率を求める

続いて、EPSからも計算してみましょう。計算方法は大筋同じで、n年後の予想株価を計算して、そこから期待収益率を出していきます。

異なるのは株価を計算する際の数式で、EPSと株価の関係は以下のとおりになります。

BPSから株価を求める数式との違いはROEがあるかないかですね。

したがって、EPS成長率を使うとn年後の株価は次のようになります。

これを、期待収益率を求める数式にあてはめると、

となります。

期待収益率から株価の取得妥当価格を見積もる

続いて2点目、逆に、期待収益率を設定して、どれくらいの価格で株式を取得すれば、その収益率が達成されるのか、投資家が期待する収益率を実現するための株式取得の目安価格を求めてみましょう。

計算方法は、上記の期待収益率の数式を変形させたもの(「現在株価=」の形に変換もの)になります。

BPS成長率から予想されるn年後の株価に対し、期待収益率を設定して株式取得の目安価格を計算する場合

EPS成長率から予想されるn年後の株価に対し、期待収益率を設定して株式取得の目安価格を計算する場合

この計算結果の活用は、例えば、企業選定で財務分析と事業分析をクリアした企業について、その時点では期待収益率も低く、割高感があったとしても、期待収益率が10%や15%となる価格を予め計算しておいて、株価が、期待収益率が10%を超えるラインまで下がってきたら買いを入れよう、といった形で投資のタイミングを計ったり、ポートフォリオ全体の収益率を維持・向上させるための根拠として利用することができるかと思います。

(ご参考)期待収益率の計算 −アップルの事例−

では、折角ですので、アップル(AAPL)を例に、現在株価で株式を取得した際の期待収益率を計算してみたいと思います。

BPS成長率を用いた期待収益率の数式は次のとおりでしたね。

  2018年のBPS:24.17 USD

  過去10年の年平均BPS成長率:19%

  過去10年のROEの平均:38.47

  過去10年のPERの平均:15.12

  現在株価(2019年5月1日時点):200.67 USD

これらを数式に入れて10年間(n=10)の期待収益率を求めていきます。すると、

これはあくまでBPSの成長率が維持された場合の数字であるということには留意が必要ですが、仮にこのまま成長するようであれば、現在の株価は比較的割安といっても良いかもしれません。

今回のこの計算は、あくまで計算方法をお伝えするための一例であり、投資を推奨するものではありません。投資の判断は各自の責任でお願い致します。

 

今回は以上です。

ご参考になれば幸いです。

(補足)成長率や収益率の計算方法について

Xの増加率をgとする場合、1年後のX1は、

2年後のX2は、同様にX1に(1+g)を掛けます。

つまり、n年後のXnは、

となります。ここまではn年後のBPSの計算で見たとおりです。

成長率や収益率は、増加率gに相当しますので、この数式をg=の形に書き換えます。

まず、両辺をX0で割ります。

右辺のX0は分母と分子で相殺されますので、

累乗根を求める方法で、

最後に両辺から1を引いて、見やすいように左辺と右辺を入れ替えると

となります。

年間の平均収益率や成長率等を求める際に多用する式ですので、使い勝手がわかると非常に応用が利いて便利です。

ご参考になれば幸いです。

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